窓から外を見れば、たくさんのクルマが走っている状況が見えるでしょう。道を歩けば、自分の周りにクルマがあふれていることがもっと実感できます。
長い人生の間には、誰でも交通事故の被害者になる恐れがあります。
事故にあって被害者になると、気が動転して、一瞬何が起きたのかわからず、次に何をしてよいのかわからないということがありがちです。
しかし、事故発生から時間が経つと、記憶が徐々に薄れて、正しい証拠が散逸して失われたり、思い出せなくなったりする可能性が出てきます。
事故の被害者になったときに、絶対とるべき対応を整理して覚え、正当な賠償が受けられずに大損をしないための知識を身につけましょう。
加害車両の情報を必ず確認しよう!
クルマの免許を取るとき、「クルマは道路の上で最強の乗りものだから、歩行者や自転車に乗っている人を保護しなければならない」と、口を酸っぱくして教えられます。
従って、交通事故が起きたとき、賠償責任は加害車両を運転していたドライバーに生じます。
仕事で使っているクルマであれば、雇い主にも賠償責任が生じる場合があります。
冷静に、以下の4項目を確認しておきましょう。
- 加害車両の運転者の住所・氏名
- 加害車両の所有者(または、加害者の雇い主は誰か)の住所・氏名
- 加害車両のナンバープレート(登録番号)
- 自賠責保険・任意保険など、相手の加入している保険会社、契約者、保険証券の番号、契約内容
加害車両の運転の目的と、運転者と所有者の関係も確認しておけばベストですが、まずは①から④の項目を確認しましょう。
加害者は、事故のあと保険会社に事故の報告をしますが、数日経っても加害者側の保険会社から、被害者へ連絡がこない場合があるかもしれません。
加害者が事故の報告を行っているか確認の必要があるので、必ず加害者の住所・氏名を確認しておきましょう。
警察には人身事故として届ける!
交通事故の被害者になった時は必ず警察に届け、ケガをした場合には人身事故として届けましょう。
いつまでに人身事故として届けなければならない、というルールはありませんが、一週間以内を目安にしましょう。
時間が経ってから診断書を持って行っても、事故との因果関係を疑われます。
人身事故ではなく、物損事故にしたがる警察官もいるようです。
人身事故の場合、警察は実況見分調書を作成し、事故の状況や被害者の過失の有無などの結果は重要な資料として、その後の示談交渉に影響します。
「示談」には応じない
事故が起きたとき、その場で示談を持ちかけてくる加害者がいますが、絶対に応じてはいけません。
その場で示談にして事故を警察に届けないと、当然実況見分は行われず、保険金の請求に必要になる事故証明が発行されません。
あとで痛みが出て病院に行っても、事故証明がないので保険金を請求できず、大損します。
被害者なのに「自分が悪かったかもしれない」と思いこんだり、被害者になったときの知識が十分でなかったりで、つい示談に応じる人も少なくなかったと思いますが、絶対に応じてはいけません。
家族や知り合いが加害者だったときは、人身事故として届けにくい事情があるかもしれませんが、ケガをした場合は病院に行き、必ず警察に人身事故として届けましょう。
もし自力で解決できない場合や自分に不利な状況なら、交通事故に強い弁護士に相談するという選択肢もあります。
「あの時、こうしておけば・・・」と後悔しないように、早めに相談しましょう。
絶対、病院で医師の診察を受ける!
事故直後にはまったく体の痛みを感じなかったので、人身事故として処理してもらわなかったとします。
何日か経ってから痛みが出て、症状が悪化してから慌てて診断書を提出しても、日にちが経っているので事故との因果関係があやふやになり、適正な保険金を受け取れないという最悪の事態が待っています。
人身事故ではなく物損事故として処理されると、簡単な調書しか作成されず、事故の正確な状況が不明確になり、取り返しのつかないことになります。
事故から早い段階で、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。
大きなケガのため、事故直後にすぐに病院に行った場合は、後日実況見分調書の作成に立会い、正確な状況を伝えましょう。
その時、警察は加害者の言い分を先に聞いているので、警察は加害者の言い分をもとに事故の内容を推測することが考えられます。
警察から質問された内容が、自分の記憶と少しでも違うと感じる場合、毅然と「違う」と対応することが肝心です。
事故直後にしておきたいこと
人身事故として扱われると、警察が実況見分調書を作成し、車両同士の位置関係や、事故が発生したときの道路の状況、ブレーキ痕があるかの確認を行い、事故が起きたときの状況の詳細な図面を作成します。
被害者が自分で、事故が起きたときの状況の見取り図を作成する必要はありません(自分で作成しても、客観性を疑われるでしょう)。
事故が起きたとき、目撃者がいた場合は、目撃者から住所と氏名を確認させてもらい、事故の捜査に対する協力をお願いし、警察にも目撃者の存在を伝えておきましょう。
また、事故直後の状況を撮影しておくと、より客観性の高い証拠が得られます。
スマホやガラケーのカメラで、簡単に撮影できるので、ぜひ直後の状況を押さえておきましょう。
捜査に対する協力
警察に出向いて事故の状況を詳しく聞かれたり、事故現場で実況見分に立ち会ったりするときは、自分の記憶に基づいて、時系列で証言しましょう。
警察官は「実は…だったんじゃないですか?」と質問してくると思います。
警察官は事故直後の状況を見たわけではないので、自分が疑われているような不快の念を感じることがあるかもしれませんが、警察官の質問が実際の状況と違うときは、必ず「違います」と否定しましょう。
また、ケガの状況ではすぐ病院に行かなければならず、実況見分に立ち会えないことがあるかもしれませんが、後日必ず立ち会いましょう。
こんなとき、警察の実況見分が加害者サイドの証言で出来上がっていることがあるので、少しでも「違う」と思ったときは毅然と否定しましょう。
過失の割合について
被害者のケガがひどいときは、加害者に罰金が科されるなどの刑事処分を受けることがありますが、加害者に100パーセント過失があるというわけではありません。
加害者の刑事処分と、民事上の過失割合は別であることは、頭に入れておきましょう。
自分が加入する保険会社に確認しておく内容
自分が加入する保険会社への通知も大切です。
運転者の住所・氏名や加入保険の内容などを確実に伝え、他にはオペレーターの質問にちゃんと答えれば問題ないでしょう。
伝えるタイミングですが、警察が来るまでの間や、事故処理が終わったあとがベストです。
事故が被害者の一方的過失である場合や、相手が無保険だった場合は頭を抱えたくなりますが、被害者自身の搭乗者保険や、自損事故保険、無保険車傷害保険などから保険金が支払われる場合があります。
契約内容をよく確認し、保険会社に連絡したときに質問してみましょう。
保険治療や被害者請求で損をしないための知識
交通事故では健康保険が使えないという話もありますが、これは誤解です。
むしろ、過失相殺で被害者にも過失割合が発生する場合など、健康保険を利用することで被害者の負担が少なく済むことがあるので、ぜひ知っておいてください。
被害者請求とは難しい言葉ですが、万一事故の影響で後遺症が残ったとします。
加害者が加入する保険会社は、必ずしも被害者の利益になるように努力するとは限りません。その結果、後遺症が認められないという最悪の場合も考えられます。
被害者請求は、後遺症が残る場合、被害者が自分で資料を集めて、加害者の自賠責保険に保険金を請求するものです。
集める資料がたくさん必要などのデメリットはあるものの、被害者が自分で行うことができるので、納得する結果が得られることや、示談を待たずに保険金が支払われるので、経済的に困っている場合にも有利なので、よく研究しておきましょう。
まとめ
- 加害車両の運転者、車両の所有者の住所・氏名、ナンバープレートを確認しておく。
- 警察には必ず届け、ケガをした場合には人身事故として処理してもらう。
- その時痛みがなくても、必ず病院で医師の診察を受ける。
- 自分が加入する保険会社にも、必ず連絡する。
- 健康保険が使えないというのは間違い。むしろ負担が少なくなる場合がある。
- 後遺症が残る場合、被害者請求という方法は有効。
事故の被害者になったときは、まず免許証などで加害者の住所・氏名を確認しましょう。名刺をもらうのも有効です。
実況見分で事実と違う点があれば、「違います」と毅然と対応しましょう。
また事故直後に、携帯電話のカメラで状況を撮影して、客観性の高い証拠を押さえましょう。