夏の暑い日に車のエアコンが効かなくなったら悪夢です。
冷房にはエアコンガスが必要ですが、どういう物なのかよくわからない人も多いでしょう。
エアコンの冷房は「気化熱冷却」という仕組みを利用しています。
温泉に浸かった後、時間が経つと身体が冷えますよね。
注射の前に消毒してもらう時もスースーと冷えますが、同じ原理と考えるとエアコンガスの重要性は身近に感じられるでしょう。
高圧ガスを使用しているので、カーエアコンのメンテナンスは基本的に整備士が扱う必要があります。
エアコンが効かなくなる原因として、本体だけでなく配管などからのガス漏れが大きく影響していることも知識として身につけておきましょう。
エアコンガス充填の相場を知っておくことで、知識や技術力のない業者にカモにされることもなくなりますよ。
車のエアコンガスって?
エアコンガスは冷媒とも呼ばれます。
注射してもらう時にアルコール消毒するとひんやり冷たくなりますが、消毒液が気化する時に熱を奪うからです。
エアコンガスも同じ原理と考えるとわかりやすいブー
本章では、下記4つについて詳しく解説していきます。
エアコンガスが空気を冷やす仕組み
エアコンは常温の高圧ガスを圧縮して液化し、気体になる際に熱を奪う「気化熱冷却」という仕組みを利用しています。
液化と気化を繰り返すための冷媒がエアコンガスで、気体の物質が充てんされています。
エアコンガスをコンプレッサーで圧縮して液化させ、エバポレーター内で蒸発させると気化熱冷却でエバポレーターが冷えます。
そこへ空気を通過させると冷たい空気になり、車内へと循環されているのです。
エアコンを使ってもエアコンガスは減らない!?
エアコンの内部は密閉性が極めて高く、ガスは基本的に漏れることはありません。
エアコンの仕組みとして、冷媒ガスの液化と気化の繰り替えしを利用して空気を冷やしているので、ガス自体が消費されて減ることはないのです。
でもガス漏れはするブー
なぜエアコンガスは漏れるの?
エアコンガス自体は減りませんが、ガスが漏れて減ることはあります。
エアコンガスが漏れる大きな原因は、車の振動が挙げられます。
振動で機密性が少しずつ落ちて漏れが起きるのです。
家庭用エアコンはガス漏れをそれほど心配することはありませんが、それは車のような振動がほぼ無いからです。
エアコンガス配管のジョイントにはゴム素材の部品が使われていますが、走行中の振動で結合部にガタが生じたり亀裂が入ったりするので、少しずつエアコンガスが抜けていきます。
エアコンガスが減るとどうなるブー?
エアコンガスが漏れると効かない!?
エアコンガスが漏れて減ってしまうと、気化冷却ができなくなるのでエアコンが効かなくなります。
せっかくエアコンガスを補充しても漏れていると、圧力がかからなくなってガスが霧状にならず冷たい空気が車内に送られません。
また梅雨時や真冬にガラスが結露して曇った時、曇りが取れにくく視界不良となって運転にも危険です。
エアコンガスが減っていると、コンプレッサーから「ウオーン」という異音がします。
詳しくは、「車のエアコンから異音!原因とすぐには持ち込めないときの見極め方法」をご覧ください。
エアコンが効かなくなる前にエアコンガス量の確認をしよう
エアコンが効かなくなると夏は大変です。
エアコンガスの量を確認する方法を覚えておきましょう。
サイトグラスで点検する
サイトグラスとはガスの通り道を見る部品で、液体が流れているか気泡が出ているかを確認することができます。
ガスの量が適正なら透明な液体で、泡立っていることはありません。
泡が白く濁っていればガスが減っています。
一方で透明な泡だとガスを入れ過ぎている可能性もあるので注意して下さい。
サイトグラスの場所や見方などは、下記の動画が参考になります。
サイトグラスがない車が増えた
サイトグラスは古い車に搭載されていることが多く、最近の車は非搭載なことが増えてきています。
確認方法としては、ボンネットを開けたところに「冷媒充填量◯g」と書かれている車はサイトグラスが搭載されていません。
こうした車は、ディーラーや整備工場などで確認をお願いすることになります。
その時の相場などは次章でご紹介します。
エアコンガスの補充費用ってどれくらい?交換時期は?
エアコンガスの補充費用は作業工賃と合わせると、エアコンガスそのものが2,000円くらい、工賃が2,000円くらいでおよそ5,000円が補充費用の相場です。
但し整備工場やカー用品店では、工賃を含め8,000円程度必要な場合もあります。
エアコンガスはどれくらい走ったら補充という、明確な決まりはありません。
通常であれば5年間は補充する必要はありません。
しかし新車から数えて10年近く経ってくると、人によっては「最近エアコンの効きが悪いな」と感じるようになります。
タイミングとしてはこのあたりだブー
エアコンガスは基本的に漏れるものではないので、補充し過ぎるとコンプレッサーに負担がかかり、かえって効きが悪くなることもあります。
サイトグラスが搭載されていない車であれば、このタイミングで整備工場やディーラーに点検を依頼しましょう。
エアコンガスは基本的には減ったり質が低下したりということがないので、交換時期が定められていないのです。
従ってエアコンが効かなくなったら補充すれば良い、ということになりますね。
車のエアコンガスの補充方法
車にエアコンガスを補充する時はガス本体と専用の工具を用意します。
滑り止めとケガ防止のためにグローブもあると良いですね。
ガスは入れ過ぎても少な過ぎてもいけません。適正量を補充しましょう。
自分でエアコンガスを補充する場合
エアコンガスは高圧ガスなので、取り扱いは大変危険が伴う作業です。
専門知識がないとエアコンガスを誤って扱った時に、低温やけどや失明などの事故に繋がる危険性があります。
自分で補充する作業は自己責任となるので充分に注意しましょう。
車のエアコンガスの種類
エアコンガスの主成分はフロンガスで種類は様々ありますが、現在自動車用のエアコンガスは「R134a」と呼ばれるものが主流です。
1990年代のフロンガスは、オゾンホールに穴を開けるガスという有害イメージがありましたが、今は環境に優しいフロンガスが使われています。
カーエアコンのガス補充に必要な専用工具
エアコンガスを補充する為に「チャージングホース」や「ガスチャージホース」と呼ばれる専用の工具とグローブが必要です。
チャージングホースは市販で約2,000円くらいからありますが、圧力計があるものを用意しましょう。
グローブは100均でも売っていますが、滑り止めにもなり、手が汚れず怪我も防止してくれます。車載工具と一緒に車に常備しておくと役に立ちます。
チャージングホースは次も使えるので、二回目からはガス缶だけを一定頻度で補充すれば良いですね。
車のエアコンガス補充の手順
チャージングホースでガス缶とカプラーを接続し、ホースの片方を車のエアコン配管の低圧側のカプラーに繋ぎます。
ガス缶側のねじ込み部分のバルブを締めるとガス缶に穴が空き、カーエアコン機器側にガスが注がれます。
バルブの締込み量を調節してガスが流れる量も調整しましょう。
補充量は定められた圧力になるよう、メーターの数値に注意することも必要です。
ガスの圧力などは車のボンネットを開けるとシールが張ってあるのでそちらを確認しながら進めましょう。
ガスを補充する時はエンジンを動かしてエアコンを最も低い温度に、風量は最大に設定し、先程のチャージングホースのネジ込みのバルブを開く順序です。
車のエアコンガス補充作業の注意点
注意が必要な点は、エアコンガスは適切な量を補充することです。
エアコンガスは入れ過ぎても少な過ぎても効きが悪くなるからです。
エアコンガスの補充は必ず車に指定されたものを使用します。
どのガスが適合しているかは、エンジンルーム内に表示されているので確認してください。
エアコンガスの回収に関する法制度
単にエアコンガスを補充するだけなら、ガスを回収する必要性はありません。
但し車を解体する場合などは、法制度で定められた方法によりガスを回収することになるので、よく確認しておきましょう。
業者でエアコンガス補充する場合
車のエアコンガス補充はディーラーやカー用品店で行えます。
ガソリンスタンドもできますが、利益を出すためにガソリン以外のモノも抱き合わせで勧められることが多いです。
ガソリンスタンドでは資格を持った整備士が対応しているケースは少ないので、ディーラーや整備工場に相談する方が無難です。
一緒にオイルも入れた方が良い?!
エアコンガスは密閉されていますが、ガスが通る配管にはオイルも流れています。
オイルの役目はコンプレッサーを滑らかにすることですが、パッキンの密閉度も保っています。
コンプレッサーを保護するため、オイルも同時に注入した方が良いですね。
配管も一緒にキレイにできる?!
エアコンは気化熱冷却で空気が冷えますが、配管の内部に水分があると凍って通路を塞いで利きが悪くなります。
水分は空気中から徐々に溜まるので、エアコンが効かないと感じた時は配管の水分をクリーニングで除去するのも一案です。効きが改善しますよ。
エアコンガスは補充するだけでなく、エアコンパイプ内のクリーニングを行ったほうが効きが良くなります。
自分で交換するのと業者に依頼するのはどっちがいい?
前章ではエアコンガスを自分で交換するケースと業者に依頼するケースをご紹介しました。
結局どっちがいいのかという疑問が浮かんでくるかと思いますが、筆者は業者に交換を依頼することをおすすめします。
自分でやると事故のリスクがある
前章でもご紹介しましたが、エアコンガスの取り扱いは注意が必要です。
カーエアコンに使用しているガスは毒性のあるものではないので、大きな事故に繋がる危険性は低いです。
しかし一気に吸ってしまったら窒息したり、目に入ったら痛みの原因になったりします。
ガスを入れすぎても安全装置が働くので爆発はしませんが、そのまま使用するとコンプレッサーが故障する可能性もあります。
こうしたリスクを考えると、詳しくは後述しますが業者に頼んでもそんなに値段が変わらない作業なので、プロに頼むことをおすすめします。
自分でやるのとそんなに値段が変わらない
業者にエアコンガス充填を依頼すると、だいたい5,000円〜1万円程度で作業をしてくれます。
自分で行うためには道具を揃える必要があり、それらを全て揃えると同じくらいの金額が発生してしまうのです。
必要な道具 | 値段 |
---|---|
エアコンガス | 800円程度 |
チャージングホース | 2,000円程度 |
真空ポンプ | 10,000円程度 |
温度計 | 1,500円程度 |
合計 | 14,300円 |
チャージングホースや温度計は、一度買ってしまえばずっと使えます。
また真空引きをしないのであれば、10,000円のポンプも不要になります。
しかし、これからご紹介する”作業頻度”を考えると、業者に依頼した方がコスパが良いことがわかります。
作業回数が5年に1度程度
エアコンガスは基本的に5年に1度程度充填すればいいので、高価な道具を買っても使用頻度は高くありません。
業者に依頼すれば5,000円程度なので、自分で作業しなくて良いことも考慮すると道具を揃えるほどのことではないです。
業者であれば真空引きもしてくれますし、プロが整備するのでガスの入れすぎなどの心配もありません。
クリーニングもしてもらえる
業者でエアコンガス充填を依頼すれば、同時にエアコンガスクリーニングも実施してくれます。
エアコンパイプ内の不純物を取り除いてくれるので、ガスを充填しなくても効きが復活する可能性があります。
調子が悪かったとしてもクリーニングだけでエアコンが復活すれば、高い修理代を支払う必要がなくなります。
エアコンクリーニングをしてもらった結果
筆者の所有する2015年式ダイハツ「ムーヴ」をエアコンクリーニングに出した結果、以下の結果となりました。
クリーニング前 | クリーニング後 | |
---|---|---|
外気温 | 35度 | 35度 |
最高圧力 | 1.58 | 1.93 |
最低圧力 | 0.22 | 0.24 |
吹出口温度 | 17.7度 | 15.4度 |
今回作業を依頼した車は、新車登録から8年が経過していました。
エアコンが効かないというほどではありませんでしたが、点検のついでにお願いしたところ規定圧力を下回っていました。
エアコンガスクリーニングを行った後、適正圧力までガスを充填したところ、吹出口からの風の温度が2.3度も低くなりました。
それだけ冷たい風が出ていることを意味しているので、エアコンが効くようになったというわけです。
8年で2.3度も温度が上がってしまっていたので、「なんとなくエアコンの効きが悪くなった気がする」という人は一度エアコンクリーニングとガス充填してみることをおすすめします。
夏が快適になったブー
エアコンが効かなくなったら「OFF」にしよう
エアコンガスが無くなった、あるいは過度に不足した状態でエアコンを使い続けると、循環タイルというパーツが回らなくなってコンプレッサーの焼き付きが起こってしまいます。
エアコン関係の修理費用は高くつき、コンプレッサーの交換は十数万円、中古のリビルト品で済ませても70,000円程度に上ります。
単なる修理というよりも「損害」に近い金額なので、エアコンが効かない時はスイッチをOFFにするよう心がけましょう。
その後ディーラーや整備工場に点検を依頼して、適切なアドバイスを受けましょう。
専門家に相談するのがベター
車のエアコンガスは基本的に減ることがなく、質が低下することもないので「寿命」はありません。ガスが減る場合は配管などの経年劣化による漏れが考えられます。
知識や技術がない業者に言いくるめられてガスを入れ過ぎ、破損させてしまうと修理代ばかりがかさみます。
不安な時は電装業者などの専門家に相談し、適切に対応してもらいましょう。