クルマを運転しているとき、万一助手席の同乗者が開けたドアが、後ろから走ってきたバイク、または歩いてきた歩行者に接触して、ケガを負わせてしまったとします。
この場合、責任は同乗者、運転者、どちらにあると思いますか?
駅前などで、クルマで送ってきた人を降ろすときに、こうした事故が起きる可能性は大きいので、責任はどちらにあるか知っておくことで事故を未然に防ぎ、無用のトラブルを回避することができます。
さまざまな例とともに、正しい知識を身につけてください。
運転者は事故の発生を未然に防ぐ義務がある
クルマは、運転者が自分の責任において運行していると解釈されています。
同乗者によるドアの開閉も、運転者の責任によるクルマの運行の一部であり、もし運転中にトラブルが発生した場合は、運転者に賠償責任が生じることになります。
納得いかないかもしれませんが、同乗者がクルマを運転して駅前まできたわけではないからです。
同乗者が駅前などでクルマから降りる場合、運転者は後方の安全に注意し、事故の発生を未然に防ぐ義務が生じるのです。
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同乗者が起こした事故で運転者が免責となるケース
万一、同乗者による行為で事故が発生した場合、運転者は次の3つの要件を立証できれば、責任を免れることができます。
- 運転者が自動車の運転に関し、注意を怠らなかった。
- 事故は、第三者または被害者の過失によるものである。
- 自動車に構造上の欠陥、または機能の障害がなかった。
2つ目と3つ目は、わりと簡単に立証できるでしょう。1つ目の場合、立証は非常にやっかいです。
同乗者が運転免許を持っていない人で、交通法規などをまったく理解していないとします。
そうした人を同乗させることは、停車したときに不用意にドアを開けることは十分予見できることから、「注意を怠らなかった」とは認められる可能性は低いです。
運転者の責任を問えない状況で事故が起きたら?
タクシーが定員いっぱいにお客を乗せ、押ボタン式の点滅の赤信号に遭遇したとしましょう。
運転手がボタンを押すためにタクシーから離れ、そのときに助手席に座っていたお客がドアを開け、横にいたバイクと接触したとします。
この場合、運転手はタクシーから離れていて、同乗者の行為を確認できないので、運転手の責任は問えないと思えますが、運転手が責任を問われます。
タクシーから離れる際に、「勝手にドアを開けないでください」と、注意喚起する責任があります。
お客が勝手にドアを開けたことで、注意喚起を怠ったことになるからです。
同乗者が助手席で暴れてハンドル操作を誤った事故は?
酒に酔った同乗者を助手席に乗せ、家まで送る途中、酔った勢いで同乗者の手が運転者にあたってハンドル操作を誤り、事故が発生したとしましょう。
運転者の責任を問うのは酷で、運転者が注意を怠らなかった免責のケースに当てはまりそうですが、同乗者がこうした愚行に及ぶことは本当に予見できなかったか?という点が問われそうです。
実際は、事故を詳細に検証して責任の所在が決まると思いますが、運転者にまるっきり責任がないと認定されるには、ハードルが高そうです。
運転者がスピード違反で検挙されたら同乗者にも責任はある?
筆者が友人のクルマの助手席に乗っていて、友人が速度超過で検挙されたことがあります。
運転者はあらゆる場合でも責任を負うのなら、同乗者も「助手席」に座っている以上は、責任を負うべきか?という疑問が生まれますね。
筆者は、警察官から事情聴取は受けず、友人からも「罰金の一部を払ってくれ」とは言われていません。
運転者は免許を交付されているので、自分の運転に責任を負うのは当然です。
運転者に申し訳ないという思いから、同乗者が罰金の一部を負担することは自由ですが、罰金のもつ意味を考えると、運転者のためにはならないでしょう。
同乗者がシートベルトを着用しないとき責任は誰にある?
助手席、または後部座席の同乗者にシートベルトを着用させることは、運転者の義務です。
同乗者が着用しない場合、運転者に違反点数1点が加算されます。
ただし、シートベルトの着用が困難な体形の人の場合(妊婦、超肥満体の人など)は、シートベルトを着用していなくても、違反点数は加算されません。
まとめ
- 運転者は事故の発生を未然に防ぐ義務があり、同乗者の行為による事故でも運転者に賠償責任が生じる
- 第三者または被害者の過失で生じた事故は、同乗者の行為による事故でも運転者は免責となる
- 運転者が注意を怠らなかった場合も免責となるが、立証はかなりハードルが高い
- スピード違反で検挙されても同乗者が責任を負うことはない
- 同乗者がシートベルトを着用しない場合、運転者に違反点数1点が加算されるが、妊婦や超肥満など例外もある
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