ハイブリッド車は構造がガソリン車と異なるため、効きが悪いという不満を多く耳にします。
停車中にエアコンが止まるため、冷房が効かないという話も耳にします。
しかしこれは半分正解で半分ウソです。
筆者はハイブリッド車である「カローラツーリング」を所有しているため、実際にハイブリッド車で年中エアコンを使用しています。
今回は、オーナーである筆者がハイブリッド車のエアコンについて詳しく解説していきます。
ハイブリッド車のエアコンの仕組み
ハイブリッド車とガソリン車は車の基本的な構造が異なりますが、エアコンの仕組みは基本的に同じです。
ではなぜ「ハイブリッド車はエアコンが効かない」と言われるのか、制御するシステムの違いについて説明します。
車のエアコンの基本的な構造
ガソリン車でもハイブリッド車でも、エアコンを構成しているのは大きく以下4つの部品です。
- コンプレッサー
- コンデンサー
- 膨張弁
- エバポレーター
配管の中にはガスが入っており、エアコンシステム内を循環することを熱を吸収したり放出したりします。
中でもコンプレッサーと呼ばれる部品はエアコンの心臓部であり、ガスを圧縮してシステム全体に送り出します。
このガスがコンデンサー、膨張弁、エバポレーターを通じて冷たい風になり、車内に冷風を送っているのです。
これがクーラー(冷風が出る仕組みだブー)
暖房になるとこれらの部品は使用されず、エンジンの熱を用いて車内を温めるようになります。
ポイントはエンジン
クーラーを使うためにはコンプレッサーを動かす必要があり、これはエンジンの力を使います。
暖房を使うためにはエンジンの熱を使うため、エンジンが常に動いている必要があります。
つまり車のエアコンを使うためにはエンジンの力を借りることが必要であり、エアコンを使うと燃費が悪くなると言われるのはこれが理由なのです。
ハイブリッド車はエンジンをあまり使わないブー
エンジンを使わない=エアコンが効かない
つまり、ハイブリッド車はエンジンを使わずにバッテリーでモーターを動かす仕組みであるため、エアコンが効かないと言われているのです。
しかし筆者はカローラツーリングに3年ほど乗っていますが、エアコンが効かないと思ったことはありません。
40度を超えるような埼玉県の夏でも、快適に使用できています。
ではなぜハイブリッド車はエアコンが効かないという不満が出ているのか、次章で詳しくお伝えします。
ハイブリッド車のエアコンの効きが悪いと言われる理由
筆者は冒頭で「ハイブリッド車のエアコンが効かないのは半分本当で半分ウソ」とご紹介しました。
これにはハイブリッド車のシステムには異なる2つの種類があることが原因です。
効きが悪いのはマイルドハイブリッド車
マイルドハイブリッド車というのは、発進時や加速時にモーターがアシストしてくれるタイプを指します。
つまりモーターだけで走行することはできないブー
基本的にはガソリン車に近い仕組みになっており、エアコンを駆動するのはエンジンの力を利用します。
そのためアイドリングストップなどでエンジンが停止するとコンプレッサーも停止し、冷風が出なくなり送風だけになってしまうのです。
こうした理由で、アイドリングストップ中はエアコンが効かないのです。
ストロングハイブリッド車はエアコンが効く
筆者が所有しているカローラツーリングは、大型バッテリーと駆動用モーターが搭載されている「ストロングハイブリッド」と呼ばれるものです。
こうしたシステムを搭載するハイブリッド車はエンジンが停止している時間が長いため、コンプレッサーを電動化しています。
つまりエンジンの力ではなくバッテリーの電力で駆動させるため、エアコンの効きが悪くなることはありません。
電動コンプレッサーであるかどうかがポイント
解説が長くなりましたが、ハイブリッド車でエアコンが効かないのはエンジン駆動のコンプレッサーを搭載するタイプです。
電動コンプレッサーを搭載しているハイブリッド車であれば、アイドリングストップ中もエアコンが使えるので効きが悪いと感じることはないでしょう。
最近はマイルドハイブリッド車でもコンプレッサーが電動化されている車も多いので、「ハイブリッド車=エアコンが効かない」というのは少し昔の話になりつつあります。
ハイブリッド車のヒーターは弱いので注意!
ハイブリッド車のエアコン効かない問題は、電動コンプレッサーを搭載することで解決しつつあります。
しかしヒーターに関してはエンジンの熱で車内を温めるシステムであるため、エンジン稼働率が低いハイブリッド車は不利です。
なぜエンジン稼働率が下がると暖房が効かないんだブー?
暖房の場合、エンジンが稼働する割合が減ると、冷却水から送られる熱量が減って車内が温まりにくくなります。
走行中に負荷がかかればエンジンは動作しますが、動作する割合はガソリン車などに比べて少ないので暖房に利用できる熱量が少なくなって、室内が暖まらないのです。
そのため、ハイブリッド車はオプションでシートヒーターを装着することをおすすめします。
筆者はカローラツーリングを購入するとき、シートヒーターがオプション設定だったので忘れずに装着しました。
その後標準装備になりましたが、ハイブリッド車を買うときは忘れずにシートヒーターの確認をしましょう。
ハイブリッド車のエアコン使用時の燃費は?
ハイブリッド車はエアコンを使うと燃費は悪化します。
ただし、それはコンプレッサーをエンジンで回すタイプの「マイルドハイブリッド車」のこと。
これはガソリン車と同じ仕組みなので、真夏の渋滞時には最大で10〜20%ほど燃費が悪化するケースもあります。
ストロングハイブリッド車の場合、電動コンプレッサーなのでエアコン使用で燃費が悪化することはありません。
仮に燃費が悪化したとしても誤差の範囲だブー
冷房を入れると悪化するのはガソリン車も同じですが、ハイブリッド車は暖房使用でも悪化するのです。
暖房で燃費が悪化する理由
ガソリン車の場合は、前述の通りエンジン熱を使用して車内を温める暖房使用時に燃費が悪化することはありません。
エンジンの排熱を再利用しているだけだブー
しかしハイブリッド車はエンジン熱が発生しにくいため、暖房を効かせるためにエンジンをかけることがあるのです。
燃費はエンジンを使うと悪化するので、ハイブリッド車は暖房使用時に燃費が悪化すると言われているのです。
ハイブリッド車に搭載されているヒートポンプとは?
ハイブリッド車のエアコンは、ガソリン車と違い「ヒートポンプ式」というものが採用されています。
これは一般家庭に設置されているエアコンと同じ仕組みで、熱交換器を使って外の空気を加熱して車内に放出させるものです。
家のエアコンが電気を使うように、ハイブリッド車のヒートポンプエアコンも電気を使います。
電気を使うためには発電が必要になり、暖房のためにエンジンを使い発電する必要があります。
その結果、暖房を使用すると燃費が悪くなるのです。
ハイブリッド車でエアコン使用時の燃費を悪化させない方法
ハイブリッド車でエアコンを使うとき、できるだけ燃費を悪化させないためには下記3つが大事です。
1.暖房は極力バッテリー残量があるときに使う
ハイブリッド車の暖房は電気を使用するため、できるだけバッテリー残量があるときに使用しましょう。
そうすればエンジンが発電をする必要がないので、燃費悪化を防ぐことができます。
下り坂などで回生ブレーキを多用するときは発電量自体が増えるので、暖房を使用してもエンジンがかかりにくいです。
また車を起動した直後はエンジンがかかりやすいので、こうしたタイミングでは暖房を極力つけないなどの工夫もいいでしょう。
そこまで我慢したくないブー
2.シートヒーターやハンドルヒーターを活用する
シートヒーターやハンドルヒーターは、局所的に温める機能なので燃費に悪影響を及ぼしません。
特にシートヒーターは背中からお尻まで温めてくれるので、暖房を使用しなくても十分温かさを感じることができます。
筆者も冬の間はシートヒーターを多様することが多く、ハイブリッド車にシートヒーターは必須アイテムと言えるでしょう。
3.内気循環を活用する
エアコンは内気循環を活用した方が効きが良いとされています。
冬の暖房使用時に外気取り入れにしていると、寒い空気を入れることになり暖房の効率が下がります。
ただし内気循環はずっと使用しているとウィンドウが曇ります。
安全運転に支障をきたすので、曇ってきたら外気取り入れを使い視界を確保しましょう。
燃費を気にして事故を起こしたら本末転倒だブー
また内気循環のまま乗り続けていると、車内のCO2濃度が上がり眠気を引き起こす原因にもなります。
エアコンは内気循環と外気取り入れを交互に使って、安全かつ快適な車内環境を維持しましょう。
ハイブリッド車がエンジン停止でエアコン使用するとどうなる?
車種にもよりますが、基本はバッテリーを使ってエアコンが動き続けます。
設定温度を下げたり風量を上げたりすれば、強制的にエンジンがかかることもあるでしょう。
燃費重視のエコモードは燃費優先でエアコンの効きが弱くなることもありますが、設定を変更して効きを強くすることは可能です。
アイドリングストップを使用する簡易的なハイブリッド車は、停車中にエンジンが停止するのでエアコンも一緒に停止します。
車種によってはエバポレーターに蓄冷剤がついており、数分程度であれば冷たい風が出続けることも可能です。
ストップ・アンド・ゴーが多いと蓄冷剤が冷えずに意味ないブー
そういう場合はアイドリングストップを解除すればエンジンが再始動するので、車内が急激に高温になることを防げますよ。
ハイブリット車のオートエアコンのベストな設定温度は?
自動車部品のカルソニックカンセイ社は、運転中のエアコンの設定温度の適正値として、日本車は25℃を推奨しています。
それより高くても低くても燃費に対する影響は変わりません。
家電製品の場合、設定温度を変化させると消費電力に大きく影響しますが、カーエアコンは空気を取り入れる場所によって冷え方が変化します。
外気温が高い時は内気循環にするとエアコンの負荷が減って燃費が向上します。
外気が高温だと室内は車外以上に高温になることもあります。
こんな時はエアコンがフル稼働して燃費に大きく影響するので、エアコンを動かす前に窓を開けて室内外の温度差を小さくすることも大切ですね。
お盆シーズンの渋滞対策に知っておきたい豆知識|カルソニックカンセイ株式会社
ハイブリッドで車中泊するならエアコンはどうしたら良い?
ホテル代を節約するためにサービスエリアなどで車中泊する時、ハイブリッド車のエアコンはどうしたら良いかという疑問が湧いてきます。
何もしないと停車中はエアコンがストップするので、停止しないよう設定を変更しましょう。
プリウスの場合はバッテリーの電力が減ると自動的にエンジンがかかるので、ガス欠で無い限りエアコンがストップすることはありません。
但し排ガスの問題や、知らぬ間に誤って発進する可能性もあるので注意しましょう。
筆者はキャンプ場でエアコンを使い続けましたが、定期的にエンジンがかかってしまうので消灯時間以降は使用できませんでした。
フェリーで北海道に行ったときも、エンジンはかけられないのでエアコンは使い続けることはできませんでした。
車のエアコンは家庭用より高出力なので、すぐにエンジンがかかってしまうようです。
車中泊の際には、扇風機を持ち込んで車内の電源に接続すれば、1晩は余裕で使うことができます。
まとめ
- ハイブリッド車のエアコンは効きが悪いというのはウソ
- 電動コンプレッサー搭載のハイブリッド車ならエアコンはバッチリ効く
- ただしエンジン熱を利用するヒーターは効きが悪い
- ハイブリッド車はクーラー使用時は燃費悪化しないが暖房は悪化する
- 燃費悪化を防ぐためにもシートヒーターは必須