クルマを運転していて、信号機のない十字路、あるいはT字路を通りすぎたあと、突然後ろから「ナンバー○○の運転手さん、停止してください」というマイクの声が聞こえ、ナンバーは自分のクルマで、ルームミラーで後ろを見るとパトカーがピッタリついていてビックリ。
クルマを停めると、警察官が近づいてきて「一時停止の標識があるところは、徐行して通りすぎたらダメなんですよ」と青切符を切られ、反則金の額と点数を聞いて「トホホ」…
この取り締まりの方法に対して「卑怯だ」「なぜ先に注意してくれないのか」など、運転者不満の声がネット上にあふれています。
この記事では以下の3点を中心に解説していきます。
- 一時停止違反はむかつく!どう思う?
- 一時停止違反で逃げるとどうなる?
- 一時停止違反を認めないとどうなる?
警察が警察庁長官の通達に違反している取り締まりの実態
冒頭の文章はお恥ずかしい話ですが、実は筆者が踏切で一時停止違反をしたときの状況です。
本来「予防または制止しないで、または隠れて取り締まりを行うことはしないよう留意すること」という文言があります。
「42.8.1通達」と呼ばれるもので、昭和42(1967)年8月1日に警察庁長官が通達したものです。
隠れたところで行うネズミ捕りや一時停止違反の取り締まりは、「42.8.1通達」違反が公然と行われていることになります。
ネット上で、取り締まりを受けたドライバーの「卑怯だ」「姑息」「反則金稼ぎ」という不満は、当然でしょう。
42.8.1通達は廃止された
ちなみにこの「42.8.1通達」は、2000年12月5日に廃止されました。
表向きの理由としては「警察事務の合理化のため」としていますが、実際はこの取り締まりの実態を正当化するためかもしれません。
現在は42.8.1通達に代わるものはなく、隠れて取り締まりをすることも、違反の予防をしないことも問題ない行為とされています。
「通達違反」に対する警察の主張
警察は、「通達違反」の実態をどう考えているのでしょうか?
警察の主張によれば、自動車の運転者は警察が見ていないと公然と交通ルールに違反し、見ているときは違反しないことが問題だとしています。
つまり堂々と警察が姿を見せていたらみんな違反しないから取り締まりはできないということだブー
実際には、軽微な交通ルール違反が日常的に発生しており、交通量の多い場所では交通整理が十分に行えないのが現状です。
警察官の数が足りないため、違反を予防または制止するのが困難であると考えられています。
また、交通違反をすると反則金が科せられるため、運転者に損をさせる「見せしめ」としての要素が強いとも言えます。
一時不停止の取締り状況と事故発生件数
一時停止違反は、ちょっとした不注意で誰でも犯してしまう可能性のある軽微な違反です。
警察の取り締まり方法をめぐって苦情が多いのは事実ですが、一方で重大事故に発展する違反でもあります。
平成30年の「政府統計の総合窓口」によると、一時不停止が原因となる事故が全国で16,400件も発生しています。
さらに、一時不停止違反は死亡事故につながる確率が高い違反であることも認識が必要です。
警視庁の「平成30年における交通死亡事故の特徴等について」によると、一時不停止が原因とみられる死亡事故は88件にも上っています。
参考:平成30年中の交通事故の発生状況 | 政府統計の総合窓口
参考:平成30年における交通死亡事故の特徴等について | 警視庁
一時停止違反の罰金と点数
一時停止違反は止まれの標識や点滅の赤信号、信号機または道路標識の無い交差点などの指定場所で一時停止せず安全確認を怠り、そのまま車を走らせると交通違反となる行為です。
第四十三条車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
※引用:道路交通法第43条|指定場所における一時停止より
罰金(反則金)は普通車7,000円、点数は2点が科されるブー
違反の罰金はいくら?
3か月以下の懲役または50,000円以下の罰金と規定されていますが、交通反則通告制度の対象となっています。
交通反則通告制度は、運転者が反則行為(比較的軽微な道路交通法違反行為)をした場合、一定期間内に反則金を納めると、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けないで事件が処理されるという制度です。
※引用:警視庁「交通反則通告制度」より
つまり違反をすると青切符と納付書が渡され、反則金を納付すると刑事処分は科さず、懲役刑や罰金刑も科されることはありません。
反則金を一覧表にしたブー
車種 | 指定場所一時不停止等違反 | 踏切不停止等違反 |
---|---|---|
大型車 | 9,000円 | 12,000円 |
普通車 | 7,000円 | 9,000円 |
二輪車 | 6,000円 | 7,000円 |
特殊小型車 | 5,000円 | 6,000円 |
原付 | 5,000円 | 6,000円 |
反則金を納めれば刑事処分や罰金刑になることはないため、ほとんどの人が青切符を受け入れて反則金を納めます。
青切符にサインをしなかった場合にどうなるのかは、記事後半「一時停止違反に納得がいかない場合の対処法」にて詳しく解説しています。
違反点数は何点?
一時停止違反の点数は2点で、度合いとしては軽微な交通違反です。
特例措置として、それまでの2年間無事故無違反だったドライバーの場合、違反の翌日から3か月間無違反を継続すれば点数は累積されず、リセットされます。
ゴールド免許はどうなる?
ゴールド免許は更新から過去5年以上無事故無違反が条件ですから、違反した時点でゴールド免許ではなくなるのです。
違反が1回なら次の更新はブルー免許証で有効期限5年、更新は一般講習60分、違反が2回以上だとブルー免許証で有効期限3年、更新は違反者講習を120分受講することになります。
自転車も一時不停止で青切符の対象になる?
一時停止を守らないと違反になるのは自転車も同じですが、今まで自転車については見逃されていたのが実情です。
しかし全交通事故に占める自転車が絡む割合が年々増加していることを受け、改正道路交通法が2024年5月17日に可決・成立しました。
この改正により、2年以内に自転車にも「青切符」が交付されることになります。
従来は「警告カード」というものを発行して警告に留まっていた自転車の一時不停止ですが、これからは反則金を納める必要が出てきます。
免許もないのにどうやって青切符を交付するんだブー?
新たに自転車の取り締まりが適用されるのは、免許の有無を問わず16歳以上の利用者となります。
16歳以上で違反行為が認められれば、その場で青切符の交付を受けることになるのです。
青切符の交付を受けて反則金を納めないと、自動車と同じ流れで裁判をすることになりますので、「一時停止違反に納得がいかない場合の対処法」をご確認ください。
反則金はいくら?
自転車の一時不停止違反については、青切符が交付されるのは2年以内です。
2024年7月31日時点ではまだ交付されていませんが、反則金は原付と同程度になると言われています。
車種 | 指定場所一時不停止等違反 | 踏切不停止等違反 |
---|---|---|
原付 | 5,000円 | 6,000円 |
一時不停止以外にも、信号無視や携帯電話の使用など、新たに113の違反行為が設定されたので自転車に乗るときは気をつけましょう。
参考:自転車の交通違反に対する交通反則通告制度の適用│警視庁
一時停止の時間はどれくらい必要?
一時停止の時間は「3秒」が交通ルールのように語られること多いです。
停止して周りの安全を確認して発進すると、3秒程度はどうしてもかかるからですね。
でもこの「3秒」は本当に交通ルールなのでしょうか。
実は法律に明記されていない
意外なことに、一時停止を規定している道路交通法第43条では、一時停止の停止時間を明確に規定していません。
第四十三条車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
※引用:道路交通法第43条|指定場所における一時停止より
「一時停止しなければならない」という文言はあっても、「何秒間停止すること」という条文はどこにも明記されていないのです。
一時停止の目的は「停止する」ことではないからだブー
一時停止で必要なことは「3秒止まること」ではなく、周囲の安全を確認して他の車両や歩行者の進行を妨害しないことです。
「一時停止時間は3秒」は目安
一時停止の時間は「3秒」と言われることが多いですが、法律で定められていることではありません。
これは停止してから左右どちらかから安全確認を行い、首を振って反対側、更に前方の安全確認をしてから発進すると「1、2、3」という調子で3秒程度の経過が見込まれるからです。
しかし道路交通法に停止時間の規定がないため、3秒というのはあくまで目安です。
従って3秒停止したつもりでも、現場にいた警察官の判断で取り締まりを受ける場合もあり、運転者から不満が漏れるのです。」
例えば3秒止まって発進したが、横断歩道に渡ろうとしている歩行者がいたら取り締まりの対象となります。
筆者は踏切前で一時停止しましたが、発進したタイミングで踏切の警報機が鳴り捕まりました。
9,000円も取られたブー!
一時停止違反に納得がいかない場合の対処法
停止時間について規定がないので、3秒間停止した感覚があっても取り締まりを受けると納得いきませんね。
取り締まりにどうしても納得できない場合の対処法を覚えておきましょう。
違反を認めず書面に署名(サイン)拒否する
違反すると青切符を発行されますが、サインすると違反を認めたことになります。
納得いかない時はサインを拒否するか、青切符の「私が違反したことに相違ありません」と記された個所に二重線を引いてサインする方法があります。
但し違反したかどうか、後から裁判で争うことになるのも覚えておきましょう。
裁判で負ければ反則金7,000円ではなく、3か月以下の懲役または50,000円以下の罰金が科されることになります。
裁判にならず不起訴処分になるケースもあるけどその時の警察の判断によるブー
ドライブレコーダーが証拠になる!?
最近社会問題化しているあおり運転の影響で、ドライブレコーダーを設置する方は多いでしょう。
どうしても納得いかない場合、違反を否認する際にドライブレコーダーの映像は重要な客観的証拠になります。
停止していた際の映像を証拠として申請し、道路交通法で停止時間について規定がない点を主張すれば有効な手段となるでしょう。
一時停止違反は現行犯じゃないと捕まらない?!
一時停止違反は、後日、捕まったり検挙されたりする可能性はあるのでしょうか?
後日検挙の代表例がオービスによるスピード違反。
システムで違反の事実を把握し、後日通知書が届きます。
ただ、現実的に一時不停止のような軽微な違反で、後日検挙という事例はほぼありません。
これは違反の立証が難しいからだブー
警察は検挙するなら、間違いなく本人が違反した証拠を用意して、客観的にみても説明できる状態にしなければいけません。
例えばパトカーのドラレコで一時不停止が確認できても、運転者が誰なのかまでバッチリ撮影できていないと検挙はできないのです。
もし逃げるとどうなる?
取り締まりに納得できなくても絶対に逃げてはいけません。
かえって心証が悪化し、軽微な違反でも逮捕される可能性があるからです。
最悪なのは警察官を振り切って逃走すると公務執行妨害に問われかねず、交通違反よりも罰則が重くなります。
また逃走しても車のナンバーを控えられていれば、後日出頭を命じられるでしょう。
逃げずにドライブレコーダーの映像を提出するなど、不服があれば毅然とした態度で対応しましょう。
現状の取り締まりはむかつく!反則金稼ぎという批判
取り締まりで罰金をとられて納得がいかず、「警察がノルマを設定し、警察の利益または、キャリア組の天下り先への上納金を納めるために、反則金稼ぎで待ち伏せの取り締まりを行っているのだ」という恨みがましいネット上の声もあります。
ノルマがあるかどうかは明らかにされていませんが、違反をするまで隠れて待ち構えるような取り締まり方は、そのように言われてしまっても仕方ありません。
しかし、反則金については警察が私的に流用している事実はなく、交通安全対策特別交付金というものになります。
そのお金は全国の都道府県に交付され、横断歩道や信号機、標識の補修に使われています。
※交通反則金は国に納付された後、交通安全対策特別交付金として各都道府県に交付され、横断歩道橋や信号機、標識等の設置や補修に使われます。
※引用:反則金の納付について | 交通反則通告制度 – 千葉県警察より
「反則金は警察官のボーナスになる」というのはウソであり、反則金を取られてしまった人たちによる恨み節といえるでしょう。
一時停止違反の待ち伏せの取り締まりから逃れる方法は?
一時停止違反の場合、停止線の「直前」できちんと停止できたかどうかが問われます。
実際の取り締まり現場で切符を切られているのは以下のようなケースです。
- 交差点の様子が確認できるポイントまで前進し、停止線をオーバーした
- 前を走る車と同じタイミングで一時停止し、そのまま追従した
取り締まりを逃れるのであれば、確実に違反にならない一時停止を行う他ありません。
道路交通法の定める一時停止はこれだブー
第四十三条車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
※引用:道路交通法第43条|指定場所における一時停止より
ポイントは以下の4点です。
- 停止線または交差点の直前で止まること
- 車両や歩行者の進行妨害をしないこと
- 踏切の警報が鳴っていないこと
- 3秒以上車が「停止」していること
ここに書かれているような一時停止を行えば、仮に取り締まりに遭っても「違反を認めず書面に署名(サイン)拒否する」で対応できます。
取り締まりをされてしまう人のほとんどが、一時停止が形骸化しており「形だけ止まった」ものになっている可能性があります。
安全確認が不十分だったり、停止線をオーバーしていたりすれば、当然警察は捕まえます。
一時停止といいながらも、ジリジリ進みながら完全停止していない人も同じです。
ネット上では、待ち伏せの取り締まりに対する非難がたくさん見られますが、自分の運転にも問題がなかったかどうかはしっかり考える必要があります。
横断歩道を渡ろうとする歩行者も目に入らない、一時停止の標識に気づかないという運転は”安全運転”とは言えません。
これでは、警察の餌食になるだけだブー
待ち伏せによる取り締まりの良し悪しはおいておいて、このような形で取り締まりが行われているのは事実です。
警察の制度を変えるのは不可能に近いので、「あの影に警察が隠れているかもしれない!」と予想しながら安全運転に努めましょう。
待ち伏せを賢く避ける運転術
待ち伏せを避けるには、周囲の状況を確認することが一番です。
特に下記のポイントでは一時停止の取り締まりに注意しましょう。
- 横断歩道の手前
- 一時停止標識の手前
- 一時停止線の手前
- 交差点の手前
- 踏切の手前
一時停止は必ず標識または道路標示があるので、しっかり確認して”手前”で止まれば良いのです。
停止線をオーバーするのは絶対NGだブー
交差点やT字路では、停止線がかなり手前に引かれている場合があります。
こういうシーンこそ「警察が待ち伏せしているポイント」です。
停止線で止まっても左右確認できないからといって、停止線をオーバーしてから止まったら即取り締まり対象になります。
一度停止線で止まり、しっかり左右の安全を確認してから再度徐行し、角で止まってもう一度左右確認を行いましょう。
すごく非効率に感じますが、警察はルールを破った人を取り締まります。
どれだけ手間がかかっても、ルール通りに運転していれば絶対に捕まることはありません。
警察に捕まるタイミングというのは、何かしら自分の気持ちにも緩みが見られるときだったりします。
気の緩みの行き着く先は交通事故だブー
また、各都道府県警察では「公開交通取締り」というものを実施しています。
事前に取り締まりポイントと日時をホームページなどで公開しているので、こうした情報を常にキャッチしておくことも大切です。
参考:公開交通取締り│警視庁
周囲の状況を確認して自衛しよう
警察は交通量や歩行者の少ないところで待ち伏せしているのは汚いという非難もありますが、そうした取り締まりが行われているのが現実です。
警察に青切符を交付されて気分が良い人間などいません。
無駄な時間と反則金という余計な出費を生むだけなので、取り締まりはされないのが一番です。
教習所の受け売りみたいになってしまいますが、急いでいるときや疲れているときこそ注意が必要です。
こういうものは、「今日くらいは大丈夫」と安全確認を怠ったときに捕まるものです。
これが警察ではなく歩行者の飛び出しだったら重大事故だブー
警察のやり方に不満があるのは筆者も同じです。
旅行の初日に一時不停止で9,000円は痛い出費でしたし、その後の旅行もなんとなく気分が乗りませんでした。
交通違反は何も良いものを生み出さないので、本記事でご紹介している方法を参考に、取り締まりを回避しましょう。
そして万が一に備えて、無罪を主張するためのドライブレコーダーは装着しておくことをおすすめします。