交通違反でトラブルが多い右折禁止。一因として、右折禁止の標識が存在しないことが考えられます。
右折禁止を表すのは指定方向外進行禁止、いわゆる矢印の標識です。
しかし時間指定の右折禁止などは文字が小さく、直前まで気がつかないことも。
また右折禁止と横断禁止の区別が紛らわしい実態も、トラブルに拍車をかけています。
時には標識が曲がっていて本当に「右折禁止」に気づかないケースもあります。
でも警察相手にモメたら大変だからと渋々反則金を払う場合もあるでしょう。
納得できないときは、ちゃんとした対応法があるのです。
必要なのは根拠のある知識です。
右折禁止の標識というものはない
「右折禁止の標識はどんなんだっけ」と思った方は、教習所での学びがしっかり生きています。
実は右折禁止の標識というものは存在せず、「指定方向外進行禁止」というものが右折禁止に該当します。
「指定方向外進行禁止」で右折が禁止されるケース
標識 | 特徴 |
---|---|
直進 左折 右折 | |
左折 右折 | |
直進 右左折 |
右折禁止を示す標識は存在しませんが、指定方向外進行禁止の標識のなかで、右方向の矢印のない標識が右折禁止を示します。
直進・左折及びその両方以外進行禁止を示す標識でも、右折する道路があれば右折禁止を表すのです。
指定方向外進行禁止の標識は、道路交通法第四十六条に定められています。
道路法第四十六条第一項の規定に基づき、又は交通法第八条第一項の道路標識により、標示板の矢印の示す方向以外の方向への車両の進行を禁止すること。
※引用:e-Gov「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」より
この標識が「わかりにくい」と言われており、その理由の一つが設置場所です。
- 交差点の手前の左端
- 中央分離帯
- 信号機の前面
道路交通法では上記のいずれかに設置されていれば良いとされており、状況によって設置場所が変わるため見落としてしまうことがあるのです。
見落としてしまったことによる取り締まりに遭った場合の対処法は「わかりにくい「右折禁止」標識の待ち伏せ取り締まり実態」で解説しています。
右折禁止と車両横断禁止の違い
右方向への進行を制限する道路標識に「車両横断禁止」というものがあります。
右折禁止と車両横断禁止は似るけど全く違うんだブー
右折禁止は運転者が交差点や横断歩道を右へ曲がり、先の道路へ進む行為を禁止しています。
一方、車両横断禁止は、運転者が進行方向右側に見えるコンビニやガソリンスタンドなどの道路外へ、反対車線を横断して入る行為を禁じています。
つまり、その先に道路はないので、自動車が右方向へ横断し「道路外へ出る」行為が禁止されるのです。
ただし右折禁止ではないので、運転者が進行方向右側へ曲って先の道路へ進むことは問題ありません。
右折自体はしてもOKなんだブー
右折レーンがあっても違反?時間指定がある右折禁止も
補助標識で時間が指定されている右折禁止もあります。
標識 | 特徴 |
---|---|
直進 左折 右折 | |
直進 左折 右折 ※7-9時以外は右折可 |
小さな道で主に朝7:00から9:00など、交通量が激しい時間帯に自動車の右折が規制されている場合などですね。
右折レーン(進行方向別通行区分)があっても違反だブー
また朝だけとは限りません。8:00から20:00まで右折が規制されていれば、自動車が19:00に右折すると通行禁止違反に。
標識を見るときは必ず補助標識までセットで確認しましょう。
「右折禁止」標識のある交差点ではUターン禁止?
2012(平成24)年4月1日から道路交通法の一部が改正され、右折禁止の標識や看板がある交差点でも自動車のUターンが可能になりました。
右折レーン(進行方向別通行区分)の中や、右折矢印信号が表示されている場合でも同様です。ただし転回禁止でない場所に限られます。
交差点に転回禁止の標識がある場合は、Uターンすると違反行為になります。警察に捕まると6,000円の反則金を納めることになるので注意しましょう。
また歩行者や正常な他の自動車の交通を妨げる場合も、転回は禁止されています。
自分の進行方向や周囲をよく観察して、交通量など的確な状況判断による運転を心がけましょう。
右折禁止で店舗や駐車場に入るにはどうする?
店舗や駐車場に入りたい場合は、入りたい店舗周辺に車両横断禁止の標識がない場合は右折が可能です。
ただし、交通量の多い道路では右折や左折が基本的に禁止されていますの注意してください。
交通量の多い道路において、対向車線の店舗や駐車場に入る場合は転回できる交差点でUターンする必要があります。
また、車両横断禁止がある場合は、店舗や駐車場から右折方向への進入も禁止されています。
車線を跨いでの入店は事故が起きやすいので、交通量が多い時間帯や横断した先の歩行者などに十分注意しましょう。
右折禁止違反の点数と反則金
右折禁止の交差点で自動車が右折すると「通行禁止違反」、すなわち交差点右左折方法違反となり点数は1点が加算、反則金は7,000円が課されます。
一般的に反則金を「罰金」と呼ぶこともありますが、通行禁止違反は行政処分なので罰金ではなく反則金です。
ただし運転者が酒気帯び運転中の通行禁止違反は、点数が大きく異なることになります。
呼気1リットル中0.25mg未満 では14点、前歴が無ければ免停90日が課されます。
呼気1リットル中0.25mg以上 では 25点、即ち免許取り消し(前歴により欠格期間2~4年)となるので、絶対止めてください。
飲酒運転と右折禁止は関係ないように感じますが、飲酒運転をしている時点で違反が何十倍にもなることをしっかり覚えておきましょう。
わかりにくい「右折禁止」標識の待ち伏せ取り締まり実態
右折したら警察官に「待ってました」と言わんばかりに呼び止めらるケースってありますよね。
とくに補助標識で7時~9時までの時間帯が右折禁止になっているような分かりづらい場合は、余程注意していないと見逃してしまうかもしれません。
違反や事故の予防の観点からすると、右折する前に注意してくれれば良いように思うのですが…。
でも実際の取り締まりは、待ち伏せともとれるのが実情です。
警察が隠れて取り締まりを行うのは、警察がいたら誰も違反をしないため取り締まりができないから。
違反を未然に防ぐために警察官を配備できるのが理想ですが、それほど多くの警察官がいないというのが実情です。
道路標識が見えづらければ交通違反ではない
道路標識は「歩行者、車両または路面電車がその前方から見やすいように(略)、交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、管理しなければならない(道路交通施行令)」と定めています。
しかし、交差点などで街路樹の枝が伸びて標識が隠れてしまうと、「前方から見やすい」標識ではありませんね。
参考:道路交通法施行令
道路交通法では、多くの場合過失でも処罰することになっていますが、見えづらい標識については見落としても、過失にはあたらないので処罰の対象にはなりません。
設置後も、(略)正常な状態に保つようにしなければ、法律上有効な道路標識ということはできない
※引用:執務資料道路交通法解説13訂版より
「違反は違反だから」と言い分を聞かない警察官が多い
では、右折禁止の標識が見づらかったら反則金を納めなくていいのかというと、そういう話にはなりません。
標識が見えづらいために起こる交通違反は、結構起きているのが実情。
ところが「違反は違反」と、ドライバーの言い分を聞かない警察官が多いのです。
前の項の「多くの場合過失でも処罰する」と混同していることや、どれくらい見えづらいと違反なのか明確な基準がないことが、ドライバーの言い分を聞かない理由でしょう。
納得できずに違反切符への署名を拒むと、別の警察官が呼ばれて更に不穏な空気になったり、「裁判になったら大変だよ」などと脅かしたりして、結局違反切符に署名してしまうドライバーがたくさんいます。
事実、筆者も車のフロントガラスから見るのは到底不可能なほど高所に設置されていた標識を見落とし、しっかり捕まってしまったことがあります。
警察官にその旨を伝えても「確かにそういう声も聞くんだけどね〜」と取り合ってくれませんでした。
姑息だブー!
右折禁止で納得がいかない場合にするべきこと
もしどうしても捕まったことに納得できない場合、標識が見えづらいという事実を根拠に警察と裁判で争うこともできます。
納得がいかない場合でも、いったん違反切符に署名して反則金を払ったら、違反を認めたことになるので、公安委員会などに苦情を伝えることはできません。
どうしても納得いかなければ、反則金を納付しないで裁判に持ち込むしかありません。
裁判に持ち込む場合、単に見えづらかったというだけではなく、客観的にどう見えづらかったのかを示すことが大切。
違反とされた直後に、標識が見えづらい状況を写真に撮っておきましょう。
納得がいかないドライバーが最高裁まで争って、無罪を勝ち取った例があるのです。
道路標識は、ただ見えさえすればよいというものではなく、歩行者、車両等の運転者が、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであることはいうまでもない。
※昭和四一年四月一五日最高裁判例より
一方通行の道路なのに、一方通行の入り口から5メートル弱のところに、駐車禁止の標識と重なり合うように一方通行の標識が設置されていました。
しかも一方通行の標識がとんでもない方向を向いていたケースです。
この裁判は最高裁まで争った非常に特殊な例なので、よほどの根気がない限りはここまでするのは無理でしょう。
とはいえ、道路交通法施行令第一条については、現場で警察官と言い争う材料になるので覚えておくと良いでしょう。
第一条の二法第四条第一項の規定により都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)が信号機又は道路標識若しくは道路標示を設置し、及び管理して交通の規制をするときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように、かつ、道路又は交通の状況に応じ必要と認める数のものを設置し、及び管理してしなければならない。
※e-Gov「道路交通法施行令(昭和三十五年政令第二百七十号)」より
右折禁止の標識見落とし対策
右折禁止の取り締まりが行われていた場所を良く観察すると、標識が目立たない場合が多いのに驚きます。
薄暗い時間帯や悪天候だと青色の看板は、街並みの景色に溶け込んで発見しずらくなります。
また右折禁止のマーク自体はありませんので「どの方向に進むのがOKか」を瞬時に判断する必要があります。
右折禁止の標識が設置されるパターンは様々ですが、標識見落としで検挙されないコツや対策があります。
通学時間帯は枝道に右折しない
右折禁止となっている道路は、多くが通学路や生活道路となっており、歩行者が守られるようになっています。
そのため通学時間帯(7-9時)が右折禁止に設定されているケースが多く、補助標識を見ると時間帯が指定されているケースが多いのです。
もし馴染の少ない道路を走行しているのであれば、通学時間帯は枝道に入らないのが最大の防衛策です。
近道だったとしても我慢だブー
住宅街へは朝夕は進入しない
通学路と同じ理由で、朝夕の住宅街も危険です。
生活道路となっているため、右折禁止になっているケースが多いのです。
朝夕の住宅街は人通りも多く、遊んでいる子供の飛び出しなどの危険もあります。
人々の生活道路となっている箇所は、朝夕には立ち入らないのも防衛策になります。
左折ができない交差点は右折しない
左折ができない道であれば、たいてい右折もできなくなっています。
道路標識は、禁止が赤で許可が青となっているので、直進の矢印のみが記載されている標識は「直進のみ許可(それ以外は不可)」という意味です。
右折も左折もできないので注意だブー
もし瞬時に標識が判断できない場合には、矢印の方向にだけ進むのが安全です。
右折レーンがない幹線道路は禁止を疑う
幹線道路のような広い道路で、右折レーンがないときも右折は避けましょう。
右折車が退避する場所がなければ渋滞の元になるので、右折ができる交差点はほとんどのケースで右折レーンがあります。
それがないということであれば、右折禁止になっている可能性が高いです。
幹線道路ともなればそれなりの速度が出ているため、標識を探しているような時間はありません。
無理ぜず直進し、右折レーンのある交差点を左折しましょう。
ドライブレコーダーは有力な材料
前述の通り、見えづらい道路標識を見落としても、有効な標識とはみなされないので交通違反にはなりません。
反則金の支払いは強制ではなく任意なので、争うと決めたら納めるのはやめましょう。
但し反則金を払うと違反を認めたことになってしまうブー
裁判に持ち込む場合はタフな精神力以外に客観的な証拠が必要ですが、ドライブレコーダーは有力な材料になります。
その場で録画データを見せて、道路標識が見えなかったことを伝えるのも良いでしょう。
標識が見えづらい違反を避けるために普段からできること
もし、日頃から標識が見えづらい場所があれば、都道府県警察のホームページから、標識や信号機に関する改善を提案することができます。
例:警視庁「道路標識に関する意見・要望の窓口(標識BOX)」
提案すると、その後の改善の様子、または改善できていない理由について回答がきます。
国土交通省のホームページからも、同じように改善を提案することができますし、東京都建設局などの道路管理者に直接通報することもできます。
新緑の時期は樹木がどんどん伸びるので、日頃から注意すると共に、見えづらくなれば積極的に改善を提案しましょう。