クルマやバイクで道を走っていたら、「ナンバー○○の運転手さん、停止してください」と自分を呼び止めるマイク越しの声が聞こえ、後ろを見るとパトカーまたは白バイがついてきていて、ドキリとした方は多いですよね。
道路交通法違反でパトカーや白バイに停められた時に、警察手帳の呈示を求めたとします。
警察官が警察手帳を呈示しなかったら、違反切符を受け取ることを拒否してその場を立ち去ったらどうなるでしょうか?素朴な疑問がわいてきます。
交通違反の際の警察手帳の呈示義務と、その場合どうしたらよいかおさらいします。
警察手帳の呈示義務についての規則はどう定められている?
警察手帳規則という規則が定められていて、第5条に次の条文があります。
職務の執行に当たり、警察官、皇宮護衛官又は交通監視員であることを示す必要があるときは、証票および記章を呈示しなければならない。
この条文を読むと、「必要があるときは」と書いてはいますが、常に警察手帳を呈示しなければならないとは書かれていません。
色々調べてみましたが、法律において警察手帳の呈示義務を定めた条文はないのです。
警察手帳の呈示の運用の実態はこうなっている
警察手帳の呈示については、だいたい次のように運用されているのが実態です。
私服の警察官が職務質問を行う場合は、必ず呈示するでしょう。
私服では、一般の市民は本当に警察官かどうかわかりません。従って、円滑に職務を執行するために警察手帳を呈示するのは当然です。
交通取り締まりなどの場合は、警察官が自ら積極的に警察手帳を呈示することはないようです。
なぜならば、制服を着用していることと、パトカーや白バイに乗っていることで、警察官が職務を執行していることが一目瞭然だからです。
警察手帳の呈示を断られたので、取り締まりを拒否したらどうなる?
交通違反で停められたときに、警察手帳の呈示を求めることは不当な要求ではありません。
しかし、呈示を断られたからと取り締まりを拒否してその場を立ち去ったら、公務執行妨害などに問われて、本来の交通違反の他に余計な刑罰が加わってしまいます。
仮に取り締まりを断って逮捕され、納得がいかずに裁判を起こしたとしましょう。
恐らく、「警察手帳の呈示を求められたら速やかに呈示することが望ましいが、警察手帳を呈示しなかったからといって、警察官が適正な職務を怠ったとまではいえない」という判決文が読まれると思います。
なお、国家公安委員長は国会で「市民から警察手帳の呈示を求められたら、応じるのは当然」と答弁していますが、末端までどれだけ徹底しているかは、その警察官次第というのが実情のようです。
警察官が本物かどうかわからないという疑問
警察官が警察手帳を偽造して、ネットオークションに出品した問題が起きたことから、警察手帳を呈示しないと、本物の警察官かどうかわからないという疑問があります。
疑ったらキリがありませんが、制服を着用してパトカーや白バイに乗っていて、公的な書類である違反切符を所持しているから、偽物ということはないでしょう。
よからぬことを考える輩がいたとしても、パトカーや白バイに制服を偽造することは大がかりすぎますし、そんなことが起きたら警察のメンツにかかわりますから、警察も注意を呼びかけるでしょう。
どうしても不安なら、その場で110番する方法もありますが、警察官の心証を更に悪くする懸念があります。素直に従った方が賢明です。
呈示義務は明確になっていない
・警察手帳規則や他の法律にも、警察手帳の呈示義務は明確に定めておらず、呈示する必要がある場合は呈示することとしている。
・私服警察官は職務を円滑に執行するために警察手帳を呈示するが、交通違反取り締まりの場合は制服を着用していることで職務を執行していることが明らかなので、呈示しない運用をしている。
・警察手帳の呈示を断られたことで取り締まりを拒否すると、本来の交通違反に加えて公務執行妨害などに問われる。